第10回 本当の自分は、免疫システムだった
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「Emotional Intelligence 」(ダニエル・ゴールマン著)をご存じですか?最近、書棚の整理をしていたら、埃をかぶって...云々というのは良くある話ですが、私も結局読み直すことに。この本の中で、神経生物学者のフランシスコ・バレーラの考えを紹介している「免疫システムは、体の脳...」というくだりに出会ったのです。さらに「この体の脳としての免疫システムが、身体内において、自己という感覚を決定する」と続きます。つまり、自己という認識は免疫力でできているというのです。
体内にイン・プット(食べ物や薬など自分が選んでいる物と、環境などから侵入してくるもの)される様々なものたちを、自己に属するものとそうでないものに選別し、消化し、自己になり得るものだけを体内の一部として融合し、自己形成の邪魔になるものに対しては、その力を抑制し排出するというのが、免疫システムの役割です。免疫力が衰えれば、多くの皆さんが目標とする、元気で素敵な人生を過ごしているはずの、理想の自分像とは異なる自己感覚が体内にあふれかえることになります。誰もが「やりたい事があるのに、いざとなると一歩が出ない」といった経験に悩まされたことが一度はあるでしょう。人生の目的が見えない、自信がない、頑張っているのに満たされない自分、といったところでしょうか。前回触れた、アンソニー・ボーデインのように誰もが憧れる素敵な人生を送っているように見えたのに、彼自身は幸せではなかったのかしら?ということにもなりうるのです。
私達は、自分が誰なのかを決めるのは、頭での思考による勝手な好みだと思い込んでいますが、そうではないことになります。自己という私たちの主体は、全身に網羅する免疫力なのです。つまり、頭で考えるイメージより、体感覚の方が現実なのです。
ニューヨークに移り住んで20年目ごろ、独身でバリバリのキャリア・ウーマンやっていましたから、疲労困憊し免疫力が落ちていた時だったのでしょう。でも、その当時のうちのビジネス「真っすぐ立つ姿勢」がテーマでしたから、まさか背中丸くして体力の衰えを認めるわけにはいきませんよね。私は、自分の健康より、見栄の方を大切にしていたことになりますよ。今更ながらに反省しますが、自分の身体の苦しみを受け入れるのが嫌で、身体を無視したスピリチュアルにはまって「本当の自分探し」に興味を持ち、現実逃避していた時期があります。でも、「じゃあ、今ここにいる私は誰?」という疑問にぶつかった。そして、そのついでに、「真のスピリチュアル=真のフィジカル」なのだと、気づいてしまったのです。だって、それが、日本が誇る「禅」なのですよ。何時から、私達日本人は「健全な体に、健全な魂やどる」を忘れてしまったのでしょう?