「ふりだしに、戻る」、つまり初心に帰る事で、それまでの自分の人生を振り返り、自分の希望する未来への道を歩むにあたり、何が有効で何が無効なのか心と頭の整理が出来ます。今まで見落としていた自分の長所と短所、人生の素晴らしいさ、知恵を授けてくれる色々な経験における解釈など等、多くの情報を得る事が出来るだけでなく、心身共に詰っていたゴミが取り払われるのです。
見も心も軽くなって、特に新しいプロジェクトに向かう時は、これがとても良いのです。新プロジェクトを始める前に、過去に未消化、あるいは消化不良になっている人生の問題を片付け、前進するための機能をメンテナンスしておけば、心おきなく前に進む事が出来ます。この機会に、禅の指導者として有名な故・Shunryu Suziki の 「Zen Mind, Beginner’s Mind (訳、「初心、禅心」)」と、ジャック・フィニイのニューヨークを舞台にした「ふりだしに戻る」いう2冊の本をお勧めいたします。
秋から始まる(といってももうその序章はすでに始まっているのですが)新プロジェクトに、思う存分集中できるように、先ずは久しぶりにダンスに戻ることにしました。何と言ってもマーサ・グラハムのダンスが、私のニューヨーク・ライフの始まりなのです。それだけではありません。今考えると、多分、MakikoMethodの始まりだったのです。ですから、新たなプロジェクトに向かう時、理由のない不安から前進できなくなった時、とても疲れた時、私はマーサ・グラハムのダンスという素晴らしい場所に帰り、ニューヨークへ来た時の初心を振り返る事が出来る自分を、とても嬉しく思うのです。
マーサ・グラハムのダンスを学ぶ事が、私に心身一如の切を気づかせてくれた初めだったと思います。マーサの動きは、沢山あるモダン・ダンスの中でもとってもユニークですが、人間と地球との関係の大切さを感じさせてくれる、素晴らしいテクニックなのです。それが解ってくるまでには、長い練習が必要です。でも、本当にマーサのテクニックを理解出来たなら、その努力は自信というお金では買えない素晴らしい贈り物で報われる事でしょう。
というわけで、6月の後半からマーサ・グラハム・ダンス・スクールのサマー・インテンシヴ・コースに参加しました。全6週間のプログラムのうち5週間、毎朝9時から2時間のダンスのクラスを取りました。3週目にクラスの皆さんと取った写真がフェース・ブックに、そのうち掲載されると思います。
何と、20代のダンサーの卵達の中で1人、もうすぐ52歳になる私が、堂々とレオタードで、大きな鏡の前で恥ずかしげもなく踊っている姿を想像してください。初めの3日くらいは、さすがに恥ずかしかったですねえ。しかも、特に御尻と足の裏側が、筋肉痛で大変!でした。でも、久しぶりに感じた筋肉痛の自分が、楽しくて可笑しくて・・・そんな自由な人生を送る事ができる自分に感謝しました。
それが4週目に入ると、昔取った杵柄(きねづか)とは、まさにこの事。信じられないくらい体が動くようになりました。NYUの大学院の生徒として勉学に集中するために、1994年にマーサ・グラハムを離れてから20年たちますが、体はチャ~ンと覚えているのですよ。もしかしてちょっと頑張れば、もう一度ダンサーになれるかも?と思っている自分がこれまた不思議で、楽しくて・・・ふふふん。
5週間毎週先生が変わるのですが、何と最初の週は、私がマーサグラハムの特別な作品「パノラマ」を踊った時の、最初のリハーサル・ディレクター、スーザン・菊池でした。ブロードウェイのショー「王様と私」にも出演していたその世界では有名なダンサーです。スーザンは私が生徒だった頃、良くクラスをとっていた先生の1人です。ですからどんなダンスのコンビネーションが出て来るか、大体解ります。良く知っている動きなら気が楽ですから、私にとってはラッキーでした。
そして第3週目は、大昔に私のクラス・メートだった、ミリアム・バルボサ先生でした。、洗練された情熱を見せてくださいました。生徒だった時代からの彼女の成長に、本当に驚かされました。力強さの中に、優雅な気品を感じさせる指導の仕方に感動しました。彼女の自分を真っ直ぐに見つめる強さを、尊敬(admire) している自分に気がつきました。こんなに真摯な人には、とっても久しぶりに会った気がします。
第4週目は、日本人ダンサーのYuko先生でした。私がグラハムを離れてからいらした彼女の事は、今回までお名前しか存じ上げませんでした。クラスを取る際の、時間厳守、服装などのマナーを、きちんとお教えていらっしゃいました。彼女のクラスで教えて頂いた体の使い方の新情報から、マキコ・メソッドにおける大きな気づきへと発展する事になりました。彼女の観察力と、献身的な指導に感謝したします。 この気づきにつきまして、別のブログで詳しくお話します。
第5週目にフレンチのアミリー先生。 ある日のクラスでおっしゃった、「あなた達がどんな人間であるか、必ずダンス(動き)に出ます。だから良いダンスを踊るには、良い人間にならなければなりません。」が、印象的でした。
そして、マーサ・グラハム・スクールの現校長であるヴァージニは、ミリアム先生と同様に、クラスメートでした。懐かしい昔の事を色々お喋りし、楽しい一時を過ごしました。
この素晴らしいメソッドは、人間がいかに動くべきかを、教えてくれる最高の身体メソッドだと思います。このメソッドの根底にある、マーサ・グラハムという人の真の自身を共有できるメソッドなのです。いかに彼女が、自分に正直な人間であったかという事です。
1990年にニューヨークへ移住し、自分の新人生の初めに、このメソッドに出会い、それを通して自分を学ぶ事が出来た自分の人生に、とても感謝しています。